Yoshiのつぶやき。

今日のChez Yoshiは…

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あるレストランの話

いつも一人で来られるお客様がいらっしゃいました。

毎週土曜日の夜に、歩いて5分くらいの距離をゆっくり歩いてきて。

ワインのボトルを注文して、コース料理と一緒にすごく楽しんでいらっしゃって。

決して人懐っこいという感じではなく、むしろあまりコミュニケーションが得意とは見受けられず。
それでも、3年くらいずっと、毎週通い続けてくれているから、少しずつ、シェフや従業員に打ち解けていって。

物静かな感じで、お食事だけを楽しんでいらっしゃると思っていたのに、一度話してみると、すごくお店の細やかなところまで、目が届いている方で。

店が忙しそうにしている時は、黙って食事をして帰られて。
暇で、貸切に近い時は、楽しくお食事しながら、会話を楽しまれて。


そして、ある日その方は、

「シェフ、僕、実は10年前に大病をしまして、その時、あと10年は生きられない、と医者に言われたんです。
それで、実は今、11年目なんで、いつ死んでもおかしくないんですよ。」と、笑いながらおっしゃって。


「いやいや、全然元気そうじゃないですか!何処が悪いんですか??」と、伺うと


「フフフ…」と、笑ってはぐらかされました。



それからも、毎週毎週来られていて。

でも、その話を聞いたせいでか、少し体が衰弱していくように見える気がして。




そして、去年の1月に

「シェフ、実は糖尿病も併発して、ちょっと検査入院しないといけないので、3週間くらいこれないんです」

とおっしゃって。


「そうなんですか!!そしたら、3週間どころじゃなくて、退院しても、フレンチなんか食べてる場合じゃないでしょう?」

と言うと、

「ここに通うために、嫌だった検査入院するんですよ。
確か前にもシェフに言ったと思うけど、僕、そんなに長くは生きられないはずなんですよ。
しかも、僕は独身だから、誰も悲しむ人はいないし、いつ死んでもよかったんですよ、前は。
でも、もう少しこの店の料理を食べ続けたいんで、嫌やった検査入院するんです。だから、シェフ、退院したらすぐ来るから待ってて下さいね」

と、おっしゃって。


そして、3週間後、本当に退院したその足で、昼にランチに来て下さって。

「シェフ、もう薬打ってるから大丈夫やで!」と言って、

いつものワインを注文されて、ランチのコースをペロッと召し上がられた。

確かに、顔色は入院する前よりも随分良く、食べるペースもお店に来られだしたころと、同じスピードに戻っていた。

でも、いくら病気に詳しく無いとはいえ、薬を打ちながらフレンチを食べる事が良くない事ぐらいは分かるので、


「あのね、独身とはいえ、ご両親はなんとおっしゃってるんですか?
やっぱり、フレンチや、アルコールはやめてほしいと思ってるんじゃないですか?
なんやったら、僕の事、殺人幇助と思ってるくらいじゃないですか?」

と、尋ねると、


その方はいつになく、真剣な顔で

「シェフ、僕はこの店に来たいから医者の治療を、初めてちゃんと受けようと思って。
そうじゃなかったら、もともと、もう後10年です、と言われた10年から2年も経ってるんですよ。
以前は、どんなに両親にすすめられても絶対に病院に行かなかった。
それが、今は自分から病院に行きたいと言い出して、その理由が、この店に来たいからって言うたら、両親はすごい喜んでたよ。
僕の今の目標は、出来るだけこの店で料理を食べ続けて、家に帰った瞬間そのまま大往生することやねん」

と、言われた。

ここまで言われた店側としては、もはや身体に悪いかもしれないと分かっていたとしても、
自分が美味しいと思うお皿を、出し続けるしか無いじゃないですか。

そして、出来る限り、長生きして貰う事を祈るしかないじゃないですか。



それから数ヶ月間、また毎週来店されていて。



ある日、そのお客様が、急にピタッと来店されなくなった。



もしかして、検査入院されたのかな?、とか。

いやいや、最後に来店された時、すごく元気だったよな?

とか思っているうちに、3ヶ月くらいすぎて。

ある朝、ポストに1通のハガキが届きました。

ご両親からの訃報の便りでした。




言葉を失いました。



全身に鳥肌がたちました。



一瞬だけ、迷いましたが、そのお客様の家に、お線香をあげに寄せてもらいたい旨の電話をしました。

電話口で『貴方が殺したようなもんだ!』と怒鳴りつけられるかもしれない、と思っていました。

でも、ご両親は快く承諾してくださって。

お宅にあがらせていただいて、お線香をあげて、しばらく話をさせてもらっているうちに
ご両親から、

「息子は毎週、お宅の店に行くのを楽しみにしていて、その為に1週間頑張っていたようなもんです、本当に感謝しています」

という有難い言葉を頂いた。


大好きな赤のボトルをお供えさせて頂いて、店まで歩いて戻ってくるまでの道中、武者震いが止まらなかった。


言葉通り、亡くなる3日前まで、いつも通り来店され。

亡くなった当日も、ご両親に伺ったところ、普段通り、自分の好きなものを食べて、普段通り、自分の寝床について。
家族の者でも、なんの変調も気付かないまま、そのまま眠るように息を引き取られたそうです。



今日8月11日は、その方の命日です。


偶然ですが、僕の誕生日の1日前です。

ただただ、本当にこの店、Chez Yoshiをしていて良かったと。


自分の思うように生きて、言葉通り本当に、最期までお店に通って下さった、そのお客様の事を、僕は一生忘れないでしょう。

安らかにお眠り下さい。


そして天国で、うちなんかよりも、もっともっといいもの食べてください。
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  1. 2013/08/11(日) 00:29:37|
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